ライブレポート(ロングver.1)

これまでファンの間で待望されていた夢のイベントが、ついに2018年2月3日、さいたまスーパーアリーナで開催された。「NBCUniversal ANIME×MUSIC FESTIVAL」は、同社が前身レーベルの「パイオニアLDC」がアニメ作品をリリースし始めてから25周年を数えたことを記念した、その歴史を一望する大規模アニメソングフェスだ。そのボリュームは時間の重みを感じさせ、総勢23組のアーティストによる全86曲、総演時間は6時間を越えるという比類ない規模のものとなった。現在第一線で活躍するアーティストから歴史的名作を歌ったレジェンド、そして今年からレーベルに加わる新しいアーティストたちによって彩られ、他フェスでは例の無いほどのさまざまなコラボレーションや名曲のカバーたちも繰り広げられ、この日にしか観ることができない伝説を刻んだ。
会場が暗転するとスクリーンには『天地無用! 魎皇鬼』から「NBCUniversal」アニメの歴代のロゴとビジュアルが1年刻みで次々と現れ、それに対して会場からはめいめいの思いがこもった歓声が湧く。この映像だけですでに歴史の積み重ねを感じさせるものだ。そしてついに2018年のタイトルが現れた後、「アニメとともに歩み続けた25年の歴史」の文字が踊る。大歓声のなかトップバッターとして登場したのは、先日ホールツアーを終えたばかりのfripSide。
ボーカルの南條愛乃は、代表曲でありアニメソング界のアンセムでもある『only my railgun』(「とある科学の超電磁砲」前期OP)を熱唱すると会場は一斉にオレンジ色が点灯。つづいて、大熱唱のレスポンスが飛ぶ。リプライズの最中、南條は「今日は最後まで楽しく盛り上がっていきましょう!」と叫び、その歓声を受け止める。つづく『LEVEL5 -judgelight-』(「とある科学の超電磁砲」後期OP)も熱く歌い上げ、息を整えつつ「NBCさん25周年おめでとうございます!!」のコールに会場中が大きな拍手に包まれる。「開幕の映像からすでにウルッとなりましたが、今日は25年間を振り返るような内容が盛り盛り盛りだくさんな内容になっています」と続け、衣装がNBCのイメージカラーである青のドレスであることに触れると、今度はオーディエンスは青一色に点灯させるという息の合った遣り取りを見せ、一体感を演出する。

そこから『とある科学の超電磁砲』シリーズのメドレー4曲を展開。次々と繰り出していくさまに、観衆は彼女らがこの作品で重ねた歴史を強く感じたことだろう。次に歌う、2月28日発売の新曲『killing bites』(『キリングバイツ』OP)を八木沼悟志が「激しい楽曲」と表現し、それを受けた南條は「まだまだ始まったばかりですが、体力を温存しないでください!最後まで燃え尽きて行きましょう」と煽り、パワー全開の姿勢を取るとファンは大きな歓声で応え、ライトは赤に染まる。ヘヴィなリフに乗せ、冒頭から南條のハイトーンが冴え渡り、ギターワークが激しく暴れ回り、fripSideの新境地とも言える楽曲を披露した。そこから『Two souls-toward the truth-』(「終わりのセラフ 名古屋決戦編」OP)へと進むと作品カラーである緑が点灯し、南條はここでも限界を超える勢いのハイトーンを響かせる。『black bullet』(「ブラック・ブレット」OP)が始まるとともに作品のOP映像がバックに映り、ダンサーが登場し、会場は赤一色。
この曲でシリアスな空気を作り上げたまま一礼して去るfripSideを受けて登場したのは黒崎真音。スクリーンに「X」の文字が写ると、展開されるのはこの曲。「東京レイヴンズ」のOP曲『X-encounter』だ。彼女のイメージカラーである紫に色が変わり、会場には緑のレーザーがX字に照らす。キレのある振り付けを見せつつ歌い上げると、間奏では「NBCフェス、声を聴かせてくれますか?」と煽り、みるみるうちに会場の温度を高めるステージングだ。『刹那の果実』から『楽園の翼』へと展開する「グリザイアメドレー」ではハイスピードな楽曲を高らかに、よりエモーショナルに歌い最後に天を仰ぐその姿勢からは彼女の風格を覚えるほど。暗転の間も彼女の愛称である「ヲ嬢」の声が飛び交い、MCでは「私はもともとアニメソングを歌いたいという夢があり、NBCさんに見つけていただいて、今ここに立たせていただいています。感謝の気持ちが『ありがとう』という言葉では足りないくらいの思いがあります。それを歌で皆さんにもっと伝えたいんですけど、聴いてくれますか?」と叫び、『UNDER/SHAFT』(「ヨルムンガンド PERFECT ORDER」OP)ではステージ上に炎が上がる中、熱いビートにノッて力強く熱唱。そして彼女の代表曲のひとつ『メモリーズ・ラスト』(「とある魔術の禁書目録II」後期ED)を「私にとって大事な大事な曲です」と紹介し、満面の笑みでステージ上を左右に歩き、つづいてセンターステージへと向かい、四方に向き合い全力の応援を受け止めてステージを終えた。
入れ替わりにメインステージに姿を表したのはやなぎなぎ。今度は緑(やなぎ)色が彼女を照らす。フェスの中にあっても彼女は自身の世界観で大きな会場を包み込み、「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」のアニメ映像をバックに確かな歌声でアップテンポな『ユキトキ』を隅々まで行き届ける。「25周年って、スゴいですよね。皆さん産まれていました?」と笑いを誘い、『アクアテラリウム』(「凪のあすから」ED)へと繋ぐと海の中を漂うテーマに合わせて青が点灯。それはまるで水槽のようだ。一瞬の静けさを演出した後、ドラマティックに『三つ葉の結びめ』へと繋ぎ、ハイトーンのサビを美しく響かせ、手を左右に振って一体感を演出。つづく、 2月21日発売の新曲『間遠い未来』(『覇穹 封神演義』ED)では異国情緒をたっぷりと感じさせながらこの日はじめてフルコーラスを披露し温かい間奏を響かせて、先ごろ最終回を迎えた「Just Because!」のOP曲『over and over』へと展開。センターへ歩く道で左右のファンと目を合わせ切なさを込めた歌を届けた。
フェスの醍醐味のひとつは転換にある。その空気を引き継ぐDJ的な繋ぎも良いが、生のパフォーマンスが一瞬の音と声で変えていくさま、そして即座に反応するファンの歓声はまさに再現不能なその場の空気だ。Luce Twinkle Wink☆は元気いっぱいのアイドル性とそれぞれの持つイメージカラーの光でそれを作り上げる。『Fight on!』(『ゲーマーズ!』ED)は5人のハーモニーが美しく響き渡る楽曲でモードをチェンジ。軽やかに自己紹介をした後、初のアニメタイアップ曲『1st Love Story』(『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』OP)では、頭のてっぺんから足の指先までシンクロ率の高い振り付けで見せつつ、センターステージへ。マイクをリレーしつつ、小さなステージにカラフルな5人が密集してパフォーマンスするさまはまるで宝石箱のようだ。大きな拍手に包まれるとスクリーンには再びVJの映像が流れ、「歴史を体感せよ」の文字が並ぶ。
ここからはNBCレーベルの25年の名作カバーを展開するゾーンだ。流田Projectが登場し、まずは「パイオニアLDC」の始祖となった「OVA 天地無用! 魎皇鬼」第1期OPテーマ、『天地無用! 魎皇鬼のテーマ』をインストで披露すると、和のメロディにリスナーは聴き入る。
そこになんとKOTOKOがこのタイミングで登場!驚きの声が轟く前に彼女のボイスで『ぼくはもっとパイオニア』(同作2期OPテーマ)をカバーすると、そこにやなぎなぎが登場し、デュエットで『ef - a tale of memories.』のOPテーマを歌い、サビで美麗なハーモニーを響かせ作品世界の色に染め上げるという豪華コラボが展開される。続けて「輪廻の果てに…」(「真月譚 月姫」ED)のイントロが流れると、それだけで歓声が上がる。やなぎなぎは荘厳なこの曲にリスペクトを捧げ歌い上げ拍手を浴びた。
続いてブルージーなリフが響き渡るなか登場したGeroは伝説のアニメ『serial experiments lain』のEDテーマ『遠い叫び』をシブく唸りを上げて歌い、リスナーはじっくりと聴き入っていた。カバーといえば、流田Projectの本領だ。ボーカリストの流田豊がそこで選んだのは『HIGHSCHOOL OF THE DEAD』(同OPテーマ)。赤く照らさせるなか、ロックチューンをファルセットを駆使し熱く歌い、そこからテクニカルなリフワークが響き渡る『インフェルノ』(『ベルセルク』OP)へと繋ぎ力強く歌いシャウトで締めくくった。
つづいてはLuce Twinkle Wink☆から宇佐美幸乃&錦織めぐみ&板山紗織が登場し、『はっぴぃ にゅう にゃあ』(「迷い猫オーバーラン!」OP)をカバー。原曲のキャストによる振り付けを再現しつつ、彼女らの声で歌い可愛らしさを十分にアピール。つづくキャラソンOPはこちらも名曲と名高い『いちごコンプリート』(『苺ましまろ』OP)。それを歌うのはやなぎなぎとGeroという異色なコラボコンビ。
Geroの伸びやかなトーンが癖になりそうなマッチ感を聴かせつつ、やなぎなぎのこうした楽曲も意外でハーモニーもキマり、2人のアーティストからの提案で急遽決まったという振り付けの息もぴったりだった。
そしてこちらもイントロから歓声が上がる愛され楽曲『まほろDEまんぼー』(「まほろまてぃっく」ED)。メイド姿の深沢紗希&桧垣果穂(Luce Twinkle Wink☆)に流田豊というトリオで歌う。曲中で「えっちなのはいけないと思います!」の名台詞もキマり、大歓声のお祭りモードだ。
そこからまたもや奇跡的な瞬間が。期待を煽るドラムの音に続けて登場したのは、この1曲のために作られた『絶対可憐チルドレン』の可憐Girl'sの衣装に身を包んだKOTOKO・黒崎真音・南條愛乃による「真音ガールズ」。
当時の振り付けを再現した3人の歌姫の本気具合に呼応するかのように大きな歓声が包み込む。
『Over The Future』の原曲を歌っていた可憐Girl'sは小学生にしてアニメロサマーライブに登場し満員の会場のなか立派なパフォーマンスを見せた。あれから7年半、再評価が高まるこの曲を、同じ会場で3人の歌姫のスペシャルなハーモニーに乗せてフルコーラスが届けられたことに涙したファンも少なくないだろう。多数のアーティストによる意外なコラボでシームレスに歴史を振り返るカバーコーナーが終わり場内が騒然とするなか、それを破る「ぴぴるぴるぴる ぴぴるぴー♪」の声。ハイテンションで『撲殺天使ドクロちゃん』を歌う桃井はるこが登場だ。
萌えボイスから迫力ある低音まで駆使し、彼女ならではのカバーを歌い、「邪道魔法少女」シリーズの『大魔法峠』へと繋ぐ。2000年代初頭に萌えソングから電波ソングを確立させた彼女がこれらの楽曲をカバーするのは納得の人選。しかしMCによると初めてのカバーだったと語り驚きを呼ぶ。そして彼女の人気を確立した代表曲『ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて』のOP主題歌『愛のメディスン』を歌いながらステージをセンターから左右に回り、会場をひとつにした。
転換VJのあとはゲストアーティストとして声優の水瀬いのり・小澤亜李が登場し、板山紗織(LTW☆)宇佐美幸乃(LTW☆)とともに、出演作『がっこうぐらし!』の『ふ・れ・ん・ど・し・た・い』でポップに盛り上げる。つづいて原田彩楓 、本渡楓が登場し、桧垣果穂&錦織めぐみ(Luce Twinkle Wink☆)とともに『うらら迷路帖』のOP曲『夢路らびりんす』をメロディアスに歌う。
この流れで多くのオーディエンスが気付いたように、ここは「まんがタイムきらら」原作カバーゾーン。すると次はご期待通りに『ご注文はうさぎですか?』だ。出演者のひとり・水瀬いのりはLuce Twinkle Wink☆の板山紗織&深沢紗希とともに『ぽっぴんジャンプ♪』『ときめきポポロン♪』の2曲を歌い、最後は4人の声優とLuce Twinkle Wink☆を合わせた9人で『Daydream café』を可愛さいっぱいに、そして豪華なリレーで「心ぴょんぴょん」と歌い喝采を浴びて前半戦を締めくくった。

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