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『リアル鬼ごっこ』シリーズ・プロデューサー柴田一成×黒崎真音 対談(後編)

柴田一成(『リアル鬼ごっこ』『リアル鬼ごっこ2』監督・脚本/シリーズ・プロデューサー)×黒崎真音 対談(後編)

――『リアル鬼ごっこ3』のために書かれた「鳴り響いた鼓動の中で、僕は静寂を聴く」の歌詞ですが、込めた思いは?

黒崎真音【以下黒崎】人間は残酷な運命に向きあったときに、はじめて自分の本質を知ることができるのかもしれない……『3』では特に、無常で、非常な地獄に突然立ち向かわなくてはならなくなった主人公たちの心情を歌いたいと思って歌詞を書きました。『345』を通してなのですが、過去を振り返る回想シーンがよく出てきますよね?

柴田一成【以下柴田】出てきます。登場人物の過去の出来事や、まだ「リアル鬼ごっこ」がはじまる前の、平和な時期の回想シーンですね。

【黒崎】映画を観ていて、「過去の自分はこうだったけど、今の自分は……」と向き合うことの大切さを改めて感じたのですが、そういうことって日常生活を営んでいるだけでは、そこまで重要なことのようになかなか思えないんですよね。ああいった過酷な運命を受け入れたときに、はじめて過去の自分を後悔したり、反省したりする。でも状況は地獄だから、頭の切り替えを素早くしなければ命がない……こういう現実って、程度の差はさまざまですけれども、誰もが一度は経験したことがあると思っているんですよ。それを、「鳴り響いた鼓動の中で、僕は静寂を聴く」というタイトルにも込めています。心臓は破裂しそうなくらいドキドキしている、でも冷静に自分を見つめ直している状況……一瞬の出来事かもしれないけど、すごく長く感じる時間というか。そういうものを、この1曲で表現しようと思っていました。

【柴田】黒崎さんの中で、「東日本大震災」と重なる部分って、ありました?

【黒崎】……正直に言って、ありますね。

【柴田】震災がもたらした、何事も無かった日常が突然絶望に変わる現実の無常さ、非情さと、この『リアル鬼ごっこ345』で、絶対的な存在である王様によってもたらされる無常さ、非情さは、すごく重なる部分があると思うんですよ。震災が起きる前は、普通に学校に行ったり親と喧嘩したりしていた子供たちが、震災が起きたことで非常につらい状況に立たされてしまった。震災を経験した誰もが、いかに「これまでの人生が、日常がいかに素晴らしかったか」を考えたと思うんです。

【黒崎】私自身、震災の時は東京にいたので軽い被害で済みました。なので、とても被災者のみなさんの気持ちを語るようなことは出来ないのですが、あの震災以来、身の回りに起きるあらゆることと、震災を重ねて考えるようにはなっているんです。今まではそこまで深く考えていなかったことも、震災を通じて深く考えさせられたことはとても多くて。やっぱり、『345』を通して観ていて、運命の不遇さ、無常さは震災とすごく重なるなと思っていました。……だからこそ、最後の『5』は「Just believe.」の優しいメロディと歌詞で、希望を持たせながらこの物語に幕を閉じたい、という気持ちが確かにありました。最後の曲で、観ているみんなに光を感じてもらいたかったんです。

【柴田】3作ある中で、導入になる『3』はかなりハードに物語を描いています。『4』は男嫌いの女の子と、女嫌いの男の子が協力して生き抜いていく物語にしたのですが、その設定ってどこかライトノベル的というか、コミック的というか、セカイ系な雰囲気もある物語だったと思います。『5』は『タイタニック』のような三角関係を描いてみたのですが、高嶺の花だと思っていたヒロインと、一見するとダメな主人公の、まるでお伽話のような物語になっています。つまり、黒崎さんの歌って下さった『345』それぞれの主題歌が、まさにそれぞれのテーマとピタリと重なっているなぁと思ったんですよ。曲調もそうだし、歌詞もそうで、『345』の通り、主題歌もハードな展開から徐々に温かいものに変わっていく。本当にそうあって欲しいと思っていたので、こちらとしてはすごく嬉しかったです。

【黒崎】 そう言っていただけて、本当に光栄です。私は作品を通じて、リアルだと感じる部分に心惹かれる部分があって。たとえば『4』の結末とか、思い通りにならない運命を描かれたことで、現実世界との接点も生まれていた気がするんですよ。

【柴田】悲劇的な結末に対しては、僕自身いろいろと悩んだところでもありますね。最後は脚本家の判断であのような結末になりましたけど、僕個人としては、『リアル鬼ごっこ』はターゲットが子供たちの作品でもあるので、オチの付け方には結構気を使っているんです。それは『1』『2』のときもそうでした。ただ、黒崎さんが言うように、きっと今回の『4』に関してはあの結末が正しかったのでしょうね。

【黒崎】『5』で強く描かれている「愛の力のすごさ」を観たときに、改めてこの作品は子供たちに希望を与える映画だなと、個人的には感じました。作品のテーマ的にはフランク・ダラボンの『ミスト』(2007年)のような、徹底的に救いのない終わり方も出来るわけですが、『リアル鬼ごっこ』シリーズには敢えて、それがありませんよね。※補足として

【柴田】第一作目を作る時から、「結末をどっちに振るか」は考えたところですね。つまり、「絶望」か「希望」かです。たとえば『バトル・ロワイヤル』(2000年)って、最後は希望の見える形で幕を閉じてはいますが、最初から最後まで徹底してデス・ゲームを演じていますよね。果たして『リアル鬼ごっこ』もそれでいいのかと考えたときに、物語の描き方としては、少年少女たちが希望を持って、明日に向かって突っ走っていくようなタイプを僕は選んだんです。ただ、若い子も『SAW』(2004年)シリーズとか、『ファイナル・デスティネーション』(2000年)シリーズとか好きじゃないですか。だからそっちでやることもできたと思うのですが、僕はそうしなかったんですね。もしそっち方向だったら、お願いしていた主題歌の曲調も全然違うものになっていたでしょうね。歌詞も含めて、もっと殺伐としたものになっていただろうなって。「もっと残酷な感じで!」と言っていたかもしれないですね(笑)。

【黒崎】私、実を言うとホラー映画とかって苦手だったんですよ。今はだいぶ観れるようになってきているのですが、基本的にグロいのとか、怖くて観られなくて(苦笑)。だから最初、『345』を通して観るのも勇気が必要だったんです。でも通して観てみたら、描かれている主題の部分が「グロさ」とか「残酷さ」ではないんだなって気がついて、すんなり観られたんです。アクション映画的な部分がすごく強いと思いましたし、何より、登場人物に惹かれました。彼らが何を考え、何を背負い、何を思って行動するのか。そこを語っていく物語なんだって。『345』も、登場人物たちのその後を勝手に妄想してしまうくらいに感情移入してしまっていました。

【柴田】じゃあ、「その後」を描いたスピンオフ作品を作って下さいよ。

【黒崎】えーっ!? 私がですか? どうしよう、書けるかな……。

【柴田】よろしくおねがいします!(笑)。

【柴田】僕は登場人物で言うと、『4』のツカサ(相楽樹)が好きなんですよ。なんとも言えない存在感があって。

【黒崎】わかります! キリッとしたお顔立ちで素敵でした。ユイ(未来穂香)との関係性も可愛くていいんですよ。観ていて思ったのは、ツカサは「リアル鬼ごっこ」がはじまったとき、一番行動を起こすのが速かったんですよ。そこも格好良く見えたところでした。

【柴田】『リアル鬼ごっこ』シリーズは男の子が主人公の物語なのですが、彼女はめずらしく女性主人公です。

【黒崎】あと、『5』の希(仲間リサ)さんがものすごい美形の女優さんで、あまりの美しさにファンになってしまいましたっ!

【柴田】彼女は沖縄出身で、本業はモデルですね。性格もサバサバしていてすごく良い子です。

【黒崎】『5』は会社が舞台なので、演技も大人ですよね。キスシーンとかもあるし、「キャー!」みたいな(一同笑)。「B型って、一途なの」は超名言です!『3』『4』の初々しいドキドキとは別のドキドキが『5』にはたくさんありました(笑)。

【柴田】B型特有の気質が出たシーンですね。個人的には、全編通してもっと血液型に纏わるエピソードを盛り込めたら良かったかなぁという反省点はありますが。ちなみに、黒崎さんの血液型は?

【黒崎】 A型なんです。だから、悔しいけど「B型って、一途なの」が言えないんです! 柴田さんは何型ですか?

【柴田】 実は、僕はB型なんですよ。

【黒崎】 えー! B型の方が、B型が狩られていく作品のプロデュースを(一同笑)!

【柴田】 B型って、生まれながらに不遇じゃないですか。合コンとかでも「B型きらーい」みたいに言われるし、日々面白く無いんですよ(笑)。「血液型なんかで性格分けされてたまるか!」みたいな気持ちを抱きながら、でも当たってる部分もあったりして。だから頷けないことはないんだけど、今回何で鬼ごっこをしようかと考えたときに、「佐藤さん」はもうやったし、苗字はやめようと思って、「そう言えば、血液型の話ってみんな好きだよな……」って思ったんです。しかもB型って普段悪く言われているから、話題になるだろうなと。『1』で佐藤さんを標的にしたときは、子供や学生たちの間ですごい反響があったんですよ。可哀想な話かもしれませんが、クラスに一人は佐藤さんっているじゃないですか。今回も「B型が標的」と発表したとき、案の定ツイッターでものすごく盛り上がってくれた。「やべ俺、B型だー!」とか「なんでB型ばっかりいじめるんだ!」とか、そういうリアクションを見て「よしっ!」と思いましたね。こういう設定に反応してもらえると嬉しい。つまり、自分がB型だからではなく、プロデューサーの視点ですね。

【黒崎】 血液型は誰でも持っているものですからねー。

【黒崎】 今回B型が標的なのですが、逆に言うと主人公たちは全員B型で、圧倒的に格好良く描かれていますよね。強いし、頭も良いし、勇気もある。私はある意味、これは「B型の逆襲」的な映画だと感じたのですが。

【柴田】 それはあるかもしれませんね。未だかつて、ここまでB型であることが格好良く描かれた映画は無かったかもしれない(笑)。

【黒崎】 今日はありがとうございました! 興味深いお話が聞けて、とっても楽しかったです。

【柴田】ありがとうございました。またぜひ、お仕事でご一緒して下さいね。

【了】

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