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『リアル鬼ごっこ』シリーズ・プロデューサー柴田一成×黒崎真音 対談(前編)
柴田一成(『リアル鬼ごっこ』『リアル鬼ごっこ2』監督・脚本/シリーズ・プロデューサー)×黒崎真音 対談(前編)
――改めまして、『リアル鬼ごっこ』を映像化することになった経緯から聞かせて下さい。
柴田一成【以下柴田】もともとは、原作元である文芸社さんからは「テレビドラマ化できないか?」という打診がジェネオンにあったんですが、映画の方が向いているだろうという判断もあり、映画化の企画が立ち上がったのがそもそもの経緯です。そのジェネオンの中でも、ホラー作品などを多く担当していた僕が手がけることになったのですが、『1』と『2』は僕が監督と脚本を担当させていただきました。サラリーマンをやりながら監督までやるなんて、かなり異例のことなんですけどね(笑)。まず原作を読ませていただいたのですが、この小説が持つ独特の設定、世界観をどのように映像化すれば良いのか熟考したのですが、僕がほぼオリジナルに近い脚本を書かせていただきました。これは原作の山田悠介先生が寛大だったからこそ許された行為ですね。人によっては「原作をいじるなんて!」と怒られかねないことなのですが、先生は映画オリジナルの脚本を認めて下さいました。小説には続編があるわけではないのですが、劇場版のオリジナルの設定の延長線上にある続編いう形で『2』を制作し、シリーズを通してヒット・シリーズとすることができました。
黒崎真音【以下黒崎】さらにそのシリーズの後継作品として、今回『345』が作られたわけですね。
【柴田】そうです。ありがたいことにシリーズが非常に好評だったので、その続編的な作品を作ろうという企画が立ち上がったのですが、「この際、一気に3作品作るか!」という勢いで制作することが決まって(笑)。
【黒崎】すごい! そういうことってあるんですね(笑)。
【柴田】あるんですねぇ(一同笑)。ただ今回は、僕はプロデューサーという立場で関わらせていただき、監督は女性演出家の中でも素晴らしいセンスを持っている安里麻里さんに監督をお願いしました。3つのストーリーの流れや関連性は僕がざっくりと考えて、それを監督と脚本家の方に投げて、今回に到るという感じです。
【黒崎】原作がある作品を映画化するのって、すごく難しい作業だと思うんです。そこには原作のファンの方もいらっしゃると思いますし、どうしても劇場作品のサイズだけでは語りきれない部分も出てくると思うので。
【柴田】そこは、自分を信じてやるしかないんですよね。特に『1』は、小説の設定は西暦3000年とかなりぶっ飛んだ設定で、そこが魅力でもあるのですが、映像で西暦3000年を表現しようと思うと、時間と製作費が絶対に追いつかなくて。そこでパラレル・ワールドという設定を取り入れたのです。さらに、原作はかなりショッキングかつブラックな結末を迎えるので、そこも僕なりに「中高生たちが映画を観て元気になるような作品」を目指して、改変させていただきました。登場人物の設定も、大学生から高校生に変えたり……好き勝手にやらしていただきましたが、そこまで手を入れてしまえるのも、自分の判断を信じればこそです。小説『電気羊はアンドロイドの夢をみるか』を映画化した『ブレードランナー』(1982年)が、映画として独自のシナリオを構築して許されたのと同じかもしれません。改めて、結果的にヒット・シリーズになってくれて本当に良かったなぁと(笑)。
【黒崎】シリーズを通して、俳優さんの演技にもとても感銘を受けたんです。しかも新人の俳優さんを多勢起用されていますよね。
【柴田】敢えて新人を起用させていただいたのですが、『リアル鬼ごっこ』シリーズに出演するとみんな有名になっていくんですよ(笑)。そういう勢いのある俳優さんたちをブッキングしているからなのですが、『345』で起用したみんなも徐々に忙しくなり始めていて。舞台挨拶にみんなを揃えるのが大変になってきました(笑)。
【黒崎】若手の俳優さんたちだからこそ、なのかもしれないのですが、すごく演技がリアルに感じたんですよ。特に『3』と『4』は、若さゆえに突っ走る姿とか、絶望的な状況に叩きこまれた時の、考え方の切り替えの早さとかが、あの世代特有の“生命力”なのかなって。戦うと決めたら、立ち向かうまでに迷いがないところに独特の“リアルさ”を感じたんです。もちろん、生死を賭けた戦いなので張り詰めた緊張感もあるのですが、次第に彼らがその状況を楽しみ始めるところとかが……私がはじめてアニメのEDテーマを歌わせて頂いた『学園黙示録HIGHSCHOOL OF THE DEAD』のキャラクターたちと、少し似たものを感じました。映画を観ていると、「この状況、私ならどうする?」と感情移入している自分に気付いて。
【柴田】それは有難い見方をして下さっていますね。ただ、新人だからこそ最初は不安もあったのは事実です。でも、彼ら彼女たちの取り組み方が本当に真剣で、すごく前のめりに演技してくれました。おかげで、生傷の絶えない現場になっていました。しかも撮影が12月一杯使って行ったので、恐ろしく寒くて。走っていないとどんどん体温が下がっていくんですよ(苦笑)。寒さと怪我と、限られた時間と……その過酷な状況下で役者も撮影スタッフも一生懸命に取り組んだので、撮影が終わってからも続く熱い絆が生まれました。役者どうしは、今でも一緒に遊んだりしているようです。クランクアップが12月29日だったので、編集作業も含めると本当に怒涛の進行だったので、頭の中がグチャグチャになるんですよ。3作同時に作るなんてこと、正直もう二度とやりたくないですね(一同笑)。
【黒崎】その苦労が偲ばれます(笑)。私は『345』を続けて観させていただいたのですが、すべての物語が伏線の回収とともに繋がっていって、「なぜ今回B型が狙われることになったのか」とか、謎が徐々に解かれていくのもすごく気持ちが良くて。
【柴田】そういう意味では、3作一度に見ていただくのが一番良いかもしれませんね。でも、さすがに3本映画を続けて観るのは疲れちゃうかもしれませんが(苦笑)。『タイタニック』ばりに長尺な作品になってしまうので。
【黒崎】でも、観始めてしまうとあっという間です。これは『345』を通して観ると絶対に感動が深まるので、必ず『345』すべて観て欲しいと、まるで自分の作品のように感じていました(笑)。
【柴田】すべての主題歌の歌詞は、台本だけで書いて下さったんですよね?
【黒崎】そうです。最初にいただいた資料が台本だけだったので、そこから一気に書いていきました。
【柴田】それがすごいと思ったんです。僕としては、作っている映像と主題歌のイメージが違うものになっていたらどうしよう……と少なからず考えていて。でも、出来上がった映像に主題歌を当てはめてみたら、どれもバッチリはまっていた。こちらとしては大満足でした。実際に映画のラストに主題歌として流れたご自身の曲を聴いて、どのような感想を持たれました?
【黒崎】実は、台本を読んで私の頭の中で繰り広げられていた『リアル鬼ごっこ345』のイメージと、映画のヴィジュアルがしっかりと合致していて、私自身すごく驚いたんです。特に、「鳴り響いた鼓動の中で、僕は静寂を聴く」に合わせて編集していただいたPV映像のイメージは、私が曲のデモを聴きながら作詞をしていたときにイメージしていた映像そのものでした。高校生たちが鬼に追われて逃げ惑うシーンと、戦いながらも逃げ続けるシーンが、私が「鳴り響いた~」で描きたかった状況で。『5』の最後に「Just believe.」が流れたとに、はじめて「ああ、本当に終わったんだな」と実感することができました。あの曲で描きたかった、『リアル鬼ごっこ345』の締めを目の当たりにして、やっと一仕事終えた感じを噛み締めたというか……自分の曲なのに「曲に包み込まれる」ような感じがして。『リアル鬼ごっこ』ファンのみなさんに、『345』を観終えた後で私と同じ感情を抱いていただけるといいなぁって、今は思っていますね。
【前編終了】
※後編は具体的な楽曲の話と、恐怖と人生観について・・・
近日upしますのでお楽しみに。
――改めまして、『リアル鬼ごっこ』を映像化することになった経緯から聞かせて下さい。
柴田一成【以下柴田】もともとは、原作元である文芸社さんからは「テレビドラマ化できないか?」という打診がジェネオンにあったんですが、映画の方が向いているだろうという判断もあり、映画化の企画が立ち上がったのがそもそもの経緯です。そのジェネオンの中でも、ホラー作品などを多く担当していた僕が手がけることになったのですが、『1』と『2』は僕が監督と脚本を担当させていただきました。サラリーマンをやりながら監督までやるなんて、かなり異例のことなんですけどね(笑)。まず原作を読ませていただいたのですが、この小説が持つ独特の設定、世界観をどのように映像化すれば良いのか熟考したのですが、僕がほぼオリジナルに近い脚本を書かせていただきました。これは原作の山田悠介先生が寛大だったからこそ許された行為ですね。人によっては「原作をいじるなんて!」と怒られかねないことなのですが、先生は映画オリジナルの脚本を認めて下さいました。小説には続編があるわけではないのですが、劇場版のオリジナルの設定の延長線上にある続編いう形で『2』を制作し、シリーズを通してヒット・シリーズとすることができました。
黒崎真音【以下黒崎】さらにそのシリーズの後継作品として、今回『345』が作られたわけですね。
【柴田】そうです。ありがたいことにシリーズが非常に好評だったので、その続編的な作品を作ろうという企画が立ち上がったのですが、「この際、一気に3作品作るか!」という勢いで制作することが決まって(笑)。
【黒崎】すごい! そういうことってあるんですね(笑)。
【柴田】あるんですねぇ(一同笑)。ただ今回は、僕はプロデューサーという立場で関わらせていただき、監督は女性演出家の中でも素晴らしいセンスを持っている安里麻里さんに監督をお願いしました。3つのストーリーの流れや関連性は僕がざっくりと考えて、それを監督と脚本家の方に投げて、今回に到るという感じです。
【黒崎】原作がある作品を映画化するのって、すごく難しい作業だと思うんです。そこには原作のファンの方もいらっしゃると思いますし、どうしても劇場作品のサイズだけでは語りきれない部分も出てくると思うので。
【柴田】そこは、自分を信じてやるしかないんですよね。特に『1』は、小説の設定は西暦3000年とかなりぶっ飛んだ設定で、そこが魅力でもあるのですが、映像で西暦3000年を表現しようと思うと、時間と製作費が絶対に追いつかなくて。そこでパラレル・ワールドという設定を取り入れたのです。さらに、原作はかなりショッキングかつブラックな結末を迎えるので、そこも僕なりに「中高生たちが映画を観て元気になるような作品」を目指して、改変させていただきました。登場人物の設定も、大学生から高校生に変えたり……好き勝手にやらしていただきましたが、そこまで手を入れてしまえるのも、自分の判断を信じればこそです。小説『電気羊はアンドロイドの夢をみるか』を映画化した『ブレードランナー』(1982年)が、映画として独自のシナリオを構築して許されたのと同じかもしれません。改めて、結果的にヒット・シリーズになってくれて本当に良かったなぁと(笑)。
【黒崎】シリーズを通して、俳優さんの演技にもとても感銘を受けたんです。しかも新人の俳優さんを多勢起用されていますよね。
【柴田】敢えて新人を起用させていただいたのですが、『リアル鬼ごっこ』シリーズに出演するとみんな有名になっていくんですよ(笑)。そういう勢いのある俳優さんたちをブッキングしているからなのですが、『345』で起用したみんなも徐々に忙しくなり始めていて。舞台挨拶にみんなを揃えるのが大変になってきました(笑)。
【黒崎】若手の俳優さんたちだからこそ、なのかもしれないのですが、すごく演技がリアルに感じたんですよ。特に『3』と『4』は、若さゆえに突っ走る姿とか、絶望的な状況に叩きこまれた時の、考え方の切り替えの早さとかが、あの世代特有の“生命力”なのかなって。戦うと決めたら、立ち向かうまでに迷いがないところに独特の“リアルさ”を感じたんです。もちろん、生死を賭けた戦いなので張り詰めた緊張感もあるのですが、次第に彼らがその状況を楽しみ始めるところとかが……私がはじめてアニメのEDテーマを歌わせて頂いた『学園黙示録HIGHSCHOOL OF THE DEAD』のキャラクターたちと、少し似たものを感じました。映画を観ていると、「この状況、私ならどうする?」と感情移入している自分に気付いて。
【柴田】それは有難い見方をして下さっていますね。ただ、新人だからこそ最初は不安もあったのは事実です。でも、彼ら彼女たちの取り組み方が本当に真剣で、すごく前のめりに演技してくれました。おかげで、生傷の絶えない現場になっていました。しかも撮影が12月一杯使って行ったので、恐ろしく寒くて。走っていないとどんどん体温が下がっていくんですよ(苦笑)。寒さと怪我と、限られた時間と……その過酷な状況下で役者も撮影スタッフも一生懸命に取り組んだので、撮影が終わってからも続く熱い絆が生まれました。役者どうしは、今でも一緒に遊んだりしているようです。クランクアップが12月29日だったので、編集作業も含めると本当に怒涛の進行だったので、頭の中がグチャグチャになるんですよ。3作同時に作るなんてこと、正直もう二度とやりたくないですね(一同笑)。
【黒崎】その苦労が偲ばれます(笑)。私は『345』を続けて観させていただいたのですが、すべての物語が伏線の回収とともに繋がっていって、「なぜ今回B型が狙われることになったのか」とか、謎が徐々に解かれていくのもすごく気持ちが良くて。
【柴田】そういう意味では、3作一度に見ていただくのが一番良いかもしれませんね。でも、さすがに3本映画を続けて観るのは疲れちゃうかもしれませんが(苦笑)。『タイタニック』ばりに長尺な作品になってしまうので。
【黒崎】でも、観始めてしまうとあっという間です。これは『345』を通して観ると絶対に感動が深まるので、必ず『345』すべて観て欲しいと、まるで自分の作品のように感じていました(笑)。
【柴田】すべての主題歌の歌詞は、台本だけで書いて下さったんですよね?
【黒崎】そうです。最初にいただいた資料が台本だけだったので、そこから一気に書いていきました。
【柴田】それがすごいと思ったんです。僕としては、作っている映像と主題歌のイメージが違うものになっていたらどうしよう……と少なからず考えていて。でも、出来上がった映像に主題歌を当てはめてみたら、どれもバッチリはまっていた。こちらとしては大満足でした。実際に映画のラストに主題歌として流れたご自身の曲を聴いて、どのような感想を持たれました?
【黒崎】実は、台本を読んで私の頭の中で繰り広げられていた『リアル鬼ごっこ345』のイメージと、映画のヴィジュアルがしっかりと合致していて、私自身すごく驚いたんです。特に、「鳴り響いた鼓動の中で、僕は静寂を聴く」に合わせて編集していただいたPV映像のイメージは、私が曲のデモを聴きながら作詞をしていたときにイメージしていた映像そのものでした。高校生たちが鬼に追われて逃げ惑うシーンと、戦いながらも逃げ続けるシーンが、私が「鳴り響いた~」で描きたかった状況で。『5』の最後に「Just believe.」が流れたとに、はじめて「ああ、本当に終わったんだな」と実感することができました。あの曲で描きたかった、『リアル鬼ごっこ345』の締めを目の当たりにして、やっと一仕事終えた感じを噛み締めたというか……自分の曲なのに「曲に包み込まれる」ような感じがして。『リアル鬼ごっこ』ファンのみなさんに、『345』を観終えた後で私と同じ感情を抱いていただけるといいなぁって、今は思っていますね。
【前編終了】
※後編は具体的な楽曲の話と、恐怖と人生観について・・・
近日upしますのでお楽しみに。