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川田まみ「PARABLEPSIA 」全曲レビュー






M1:parablepsia(作詞:川田まみ/作・編曲:高瀬一矢)

デジタルサウンドとロックの融合という川田まみのアーティスト性を象徴するイントロの歯車感と、ノイジーなエフェクトとあえて抑えられたBPMがぐるぐると回る万華鏡のような幻想世界を演出し、錯視のイメージを強くする。詞は彼女の人生観そのもので、本アルバムの根幹。

M2:Borderland(作詞:川田まみ/作曲:中沢伴行/編曲:高中崎伴武矢)

現時点における“川田まみ音楽”の完成形であり代名詞的存在。本人が「これを起点に制作を始めた」と語ったとおり、本作ではリトマス試験紙の役割を果たす。他の収録曲がデジタルorロックのどちらに寄せられたものなのか、これを基準に判断していくといい。

M3:I...civilization(作詞:川田まみ/作曲:高瀬一矢/編曲:HARD STUFF)

「私……文明」。広い世界に目を向け人はどう生きるべきか、川田まみは「立て!」と歌う。ロールやループを駆使したビートワークが複雑怪奇な世界の様相を示しているかのようだ。意外にも、HARD STUFFのクレジットが川田楽曲に入るのは初めてのこと。

M4:fly blind(作詞:川田まみ/作・編曲:尾崎武士)

ハードロックにヘヴィメタル、オルタナティブ……イントロからラストまで様々に表情を変えながら鳴り響くギターが映えるこの曲に、尾崎武士の音楽愛を感じる一曲。漂う不穏な空気を振り払い、大空へと羽ばたく“私”。不安と歓喜に満ちたこの世界をギターで描き切る。

M5:Eager Eyes(作詞:川田まみ/作曲:中沢伴行/編曲:中沢伴行・尾崎武士)

I’veらしいトランスに近年のEDMで聴く“わかりやすい”エフェクトを注入。とはいえシリアスでクールな川田との整合性は図られており、間奏部分のクレッシェンドなどはさすがのバランス感覚。“若者よ肉食たれ”というメッセージに華と力強さを添えている。

M6:PIST(作詞:川田まみ/作・編曲:井内舞子)

ピストバイクをモチーフにしたブレーキのない世界。ABメロではスタート前の徐々に高まっていく緊迫感を表現。サビで逆にスロウになるのはピストバイクが一気に光速を超え、ワープゾーンへと突入する瞬間のようだ。まさに“広がる光の向こうへ…止まんない”。

M7:Enchantress(作詞:川田まみ/作曲:C.Gmix/編曲:C.Gmix、尾崎武士)

これは天使の囁き? 悪魔の囁き? 諦めた瞬間の僥倖を「妖艶な魔女」に見立て、絶望時にこそ強く輝く光の神秘性を歌った川田のセンスにC.Gmixが呼応した。本作で最も流麗なメロディと、ループするシンプルなビートのハイブリット。実に挑戦的な一曲だ。

M8:here.(作詞:川田まみ/英訳:セブン‐ロン/作曲:中沢伴行/編曲:中沢伴行、尾崎武士)

幸運な人だけが聴けたであろう「CRブラックラグーン2」のテーマソングが初音源化。中澤高瀬一矢の「Red fraction」で鳴らしたハードトランスを継承しつつ、中沢伴行と尾崎武士が“川田まみらしい”ロックに仕立て上げた。まさにI’veの歴史とアイデンティティが詰まった一曲。

M9:HOWL(作詞:川田まみ/作・編曲:高瀬一矢)

「CRブラックラグーン2」の一曲。猟犬の遠吠えを高瀬一矢がどこまでも攻撃的なハードトランスで表現。川田本人が「酸欠必至」と語った音の洪水がすさまじい。アルバム構成的にも最大の山場で、シャウト部分に川田のガールズバンドも参加し総動員体勢が敷かれている。

M10:Replica_nt(作詞:川田まみ/作・編曲:高瀬一矢)

小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」で描かれた、レプリカント=人造人間の感情。この曲で川田は現世の息苦しさを歌っており、今の人間にこそ“感情移入テスト”が必要だと訴える。抑揚なく淡々と進むサウンドと急に消え行くラストがその恐怖を助長する。

M11:It's no big deal(作詞:川田まみ/作・編曲:井内舞子)

本アルバムで最もダークなM10の次に、最も明るくエレクトロポップに寄せた本曲が登場。歌詞も一転、父の口癖をモチーフにした優しく愛に溢れた言葉が並ぶ。ライブではクレッシェンドから始まるサビでぜひジャンプしたい。ステージ上の川田に手を振りながら。

M12:Break a spell(作詞:川田まみ/作曲:尾崎武士/編曲:尾崎武士、中沢伴行)

川田のロック寄りナンバーのなかでも、より8ビートのバンド感がフィーチャーされた一曲。タイアップ作品の世界観だけでなく、尾崎武士がシングルA面曲を初めて手がけたという事実もまた、こうしたノリ重視のサウンドが生まれた理由に違いない。

M13:Dendritic Quartz(作詞:川田まみ/作・編曲:中沢伴行)

樹木の枝状の模様を内包したパワーストーン「デンドライト」。川田はこの石に、自身の人生で見つけた普遍性を投影したそうだ。1stアルバム収録曲「seed」のアンサーソングとなったこの曲は、そのミニマルな音と浮遊感のあるメロディで、聴き手を錯視の世界の向こうへと誘う。


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